目（め）　その１

６５歳のフエさんは　１０年前に左右の視力を失いました

あらゆる精密検査を受けましたが　原因は不明です

むしろ「医者はどこも悪いところはないと言った」そうです

目が見えないことを除けば　フエさんの普段の体調は順調です

パッチリとした大きな目は　対象に黒目の焦点が合わないだけで

一見すると　健常者の顔色や表情とちっとも変わりません

フエさんの息子さんいわく「視力が回復することを期待して

見料が５０万円もするカミサマに連れて行ったんだけどね・・・」

苦しい時のナントカでも　誰も息子さんを非難できないでしょう

玄米堂のことも　おそらく過大評価された口伝えを聞き及び

１時間の診療のために　往復４時間もかけて来てくれたのでした　

リーディングされた内容は　果たして贈り物となったでしょうか

フエさんは　非常に意志力の強い女性でした

十数年前　その頃の彼女の私生活は　夫の暴力が原因で

フエさん自身の言葉をかりると「地獄」を暮らしていました

夫から逃れるためなら　どんなことでも耐えられると思いました

毎日毎日　心の中で逃げることばかりを願い　考えていました

竜神さまを奉るカミサマ業の人に　相談したこともありました

そしてある日　とうとうその願いは叶いました

夫の元から逃げ延び　遠方で暮らす息子の近くに隠れ住みました

ところが　地獄から脱出する手形が失明と引き換えだったのです

エーテル世界には　願いを叶えてくれる代わりに代償を要求する

自称「神」や「堕天使」や「地球外生命体」などが存在しています　

「神」と取り引きした記憶は　フエさんにはありません

ですからどうして失明したのか　彼女自身には判っていません

がしかし　フエさんの強い願望の念に呼応した存在がいたのと

無意識の次元で　フエさんが取り引きに合意したのは事実でした

目のエネルギーは　人間の上質な生命力の一つです

筆者は　フエさんが取り引きしたことを非難できません

フエさんが自分の命を守るためには　それしかないと判断して

結果的に原因不明の失明に至り　１０年の月日が経っているのです

人間の意志というのは　他人が立ち入れない高次なエネルギーです

フエさんはおそらく　今後もあきらめずに治療法を探すでしょう

取り引きの期限が終了し　解消する日が到来するのは　今生なのか

はたまたフエさんの来世になるのか　治療師には予見はできません

人間の想念の強さ　深遠さを垣間見る症例の一つです

人は「願望」や「理想」や「夢」を　生きるバネにします

若い頃は　誰もが自己実現を目指し　自己中心的になります

愛する人の命を守るため　願い　切望する事態にも遭遇します

そして　苦難の時　人はそこから脱却したいと強く渇望します

その過程で　人は常に試されていることを忘れてはなりません　

逆境の時はもちろん平安の時でさえ　取り引きの誘いやってきます

願わくば　代償を要求しない「慈愛の神」を希求し　それに祈り

勇気をもって選択し　うまずたゆまず　歩いていきたいものです